オーストラリア南部を巡る
南オーストラリア州〜ビクトリア州
海岸沿いの崖から、眼下に広がる青い海を臨む。
砂に埋もれた階段を見つけ、砂浜に降りれば海鳥の群れ。カモメ?いや、私を迎えてくれたのはアジサシだった。
地元の子供が手を伸ばしながらその群れの中に飛び込んで行く。
群れは紙吹雪のように空を舞い、一瞬行き先に迷った後、すぐそばの海岸線へと舞い戻った。
一方、内陸部は夏の灼熱の太陽。赤い大地を走る。
目印にしてきた緩やかな丘の上の頂上付近のカーブを曲がり終えると、次の目標を求めて視線が蜃気楼の彼方を彷徨う。
その揺らめく地平線にたたずむのは、赤い‥群れ‥。それは、羊の群れであった。
見渡す限り広がるのは見捨てられた荒野と雲ひとつ無い空。その僅かな隙間に貼り付いている痩せた草を黙々と食べている。
褐色の大地の色をそのまま身にまとい、静かな時を刻みながら景色の一部として混ざり合ってしまった。
オーストラリアではエアーズロックやコアラに出会うことも良かろう。
しかし、このエリアで印象に残るのはひたすら青い海と乾いた大地‥ただ、それだけ。
いや、それだけのことに夢中になれる。
ガイドブックを置いて、自分だけの旅を見つけるのもまたいいだろう。